KOBASHI HOLDINGS株式会社

未利用農地から「コケ」で新産業を創出

~未利用農地でコケの培養実証試験に成功し、製品化・販売するチーム岡山プロジェクトを開始~

 

 KOBASHI HOLDINGS株式会社(所在地:岡山県岡山市、代表取締役社長:小橋正次郎、以下「当社」)は、株式会社ジャパンモスファクトリー(本社:埼玉県和光市、代表取締役CTO:井藤賀操、以下「JMF」)と、岡山県真庭市の未利用農地においてコケ原糸体*¹の培養実証実験に成功。また培養されたコケを協働で製品化・販売するチームを組成し、チーム岡山で未利用農地からコケで新産業を創るプロジェクトを開始しました。未利用農地の有効活用を進め、農家の収益創出およびサステナブルな地域循環社会の実現を目指します。

コケ培養実証実験

(コケ培養実証実験のイメージ)

【背景】
 農業就業者の高齢化・減少にともない、耕作放棄地が増加しており、その面積は全農地面積の約1割を占める42万ha*²に達しています。耕作放棄地の増加は、農業の生産性低下につながり、また病害虫や有害鳥獣の発生・廃棄物投棄の誘発など周辺農地や生活環境へ悪影響があります。
 当社は、耕作放棄地を含む未利用農地の新たな活用方法を見出し、農家の収益性を高めるべく、水田造形のあぜ塗り技術を応用したあぜ型培養プールでの藻類培養に取り組んできました。あぜ型培養プールは、コンクリート製プールに比べて、短工期かつ低コストでの培養が可能です。原状回復も容易なため、休閑期での農地利用など、さまざまな利用方法が期待できます。
 JMFは、世界で初めてコケ原糸体の大量培養に成功した、理研発ベンチャーです。コケ原糸体がもつ重金属を含む金属吸着能に注目し、休廃止鉱山坑廃水処理施設等で活用可能な新たな環境改善素材として、コケ原糸体の大量培養から加工などの研究開発を行ってきました。またコケ原糸体は乾燥状態でも金属吸着能があることから、大量培養によって収穫したコケ原糸体は、乾燥させてフィルターとして活用し、使用後はフィルターを燃やすことで金属の回収が可能です。陸上で4億年かけて独自の進化を遂げたコケは、ヒートアイランド現象の緩和・軽減効果や環境改善素材、その他、日本庭園や室内インテリア分野などでも人の心を癒す園芸植物として、近年、注目されています。
 両社は、太陽光を利用したコケ植物培養の共同研究を進めており、2021年2月に屋外大量培養に成功、今回、耕作放棄地の課題を抱える岡山県真庭市の協力により、農業用圃場で循環型バイオ液肥*³を使ったコケの大量培養実証実験に成功しました。

【実証実験の概要】
本実証実験は、真庭市内の農地転用地に設置したあぜ型培養プールに農業用ビニールを張った状態で12日間実施しました。日中は太陽光エネルギー、夜間は大気パネルヒーターと水温ヒーターを用いることで、コケ植物の原糸体が適応する水温を確保しながら生長させる育成試験を実施しました。これまでの予備試験では、一般にコケ植物の原糸体が育成できる水質を確保することが新たな課題ともなるため、現地で利用する水の性質を適宜、改良する工夫も必要となることがわかっていました。このたび、プール内の水3000Lの水質をコケ植物の原糸体が適応できる水質へ改良するために、真庭市が地域で無料配布しているバイオ液肥(https://www.city.maniwa.lg.jp/site/sigenzyunkan-potal/1777.html)を混合し活用することで、コケ植物の原糸体の生長を評価する育成試験を実施できました。

今回の実証実験では、コケ植物の原糸体の重量は、12日間で4倍に増えることがわかりましたが、環境制御された育成装置内では、2週間で300倍に増えることがわかっています。今後両社は、季節変動、日変動する屋外でのさまざまな環境条件を至適条件に制御し、コケ植物の原糸体を生長させる実証実験を進めていくことで、 2週間で300倍に増えることを目指します。また、太陽光エネルギーに限らず、風力や地熱など地域で未利用となっている再生可能エネルギーのさらなる有効活用を検討します。

【協働で新しい産業を創出するプロジェクト】
本プロジェクトでは、真庭市および農事組合法人寄江原と協働し、培養したコケ原糸体を栽培しコケ製品の開発を行います。また、中国銀行グループの瀬戸内地域商社である株式会社せとのわと協働し、コケ製品を販売していきます。このように岡山の複数の組織が協働することで、農家の収益創出に寄与し、サステナブルな新しい農業のかたちを目指します。チーム岡山で、未利用農地を使った地球環境の課題解決につながる新産業の創出を進めていきます。

・法人名:KOBASHI HOLDINGS株式会社
役割:未利用農地活用のための環境整備、あぜ型培養プールの造成

・法人名:株式会社ジャパンモスファクトリー
役割:コケ原糸体の大量培養

・法人名:農事組合法人寄江原
役割:コケ原糸体の栽培

・法人名:株式会社せとのわ
役割:コケ製品の企画および加工・販売先の整備

(左:コケ原糸体イメージ、右:コケフィルターのイメージ)

 当社は、引き続き「地球を耕す」を理念として、豊かな地球環境の保全に資する技術の実用化に取り組むとともに持続可能な社会の実現を目指します。人々の生活および地球をより豊かにするため、地球に眠る新たな可能性を掘り起こし、地球規模の課題解決に挑戦していきます。

*¹ 原糸体は、「胞子」と「コケ植物」の中間段階でみられるコケ植物の姿であり、「コケ植物の原糸体」を大量生産することで、「コケ植物の種(たね)」として産業利用することが期待される。
*² 水産省「荒廃農地の現状と対策」2021年4月。
*³ 生ごみ、し尿、浄化槽汚泥などの有機性廃棄物をバイオマス資源として活用した液肥。真庭市は2014年3月にバイオマス産業都市として国からの選定を受け、バイオマス利活用を推進。

【お問い合わせ先】

KOBASHI HOLDINGS株式会社 広報部 宮下 TEL : 086-298-3111

 Email : press@kobashiindustries.com